愛知県・犬山市。国宝を2つ有する町です。
1つは言わずと知れた「犬山城」。

木曽川を見下ろす丘の上にどっしりと佇む日本最古の天守閣を持つ城です。桜の名所にもなっており、春は写真撮影に来られる方も沢山いらっしゃいます。
そしてもう1つは犬山城の麓にある日本庭園・有楽苑内にある茶室「如庵」です。(有楽苑は名鉄犬山ホテル敷地内にあります。)

- 所在地 犬山市御門先1番地
- 交通案内 名鉄「犬山遊園駅」西口より徒歩約7分
有楽苑は国宝茶室如庵、重要文化財旧正伝院書院、復元茶室元庵、新設茶室弘庵と計4棟もの茶室を有する、正にお茶を楽しむためにあるような日本庭園です。
現に年間を通じて様々なお茶会に利用されています。四季ごとに彩りを変える樹々の美しい庭園は季節のお茶会にはもってこいです。
たくさんある茶室の中でも、注目したいのはやっぱりこのお茶席、
国宝茶室如庵
如庵は現存する「国宝茶席三名席」の1つ。わずか3畳半の茶室です。(国宝茶席他2席は、大徳寺龍光院内の密庵、京都山崎妙喜庵内の待庵)
如庵は、織田信長の実弟で茶人であった織田有楽が、1618年頃に京都・建仁寺に建設→三井財閥により東京へ移築→2次大戦後、財閥解体により名鉄が取得→昭和47年現在の犬山の地へ、とまるで有楽の人生を映すかのように、波乱に富んだ道を辿りました。
有楽は信長の実弟でありましたが、織田家の十一男ということもあり、家督を継いだ兄の信長とは違い、歴史上にはほとんど登場しません。本能寺の変後、豊臣秀吉に仕え、その後、徳川家康に仕えたこと、千利休に師事し、利休七哲の1人に数えられたことが分かっています。
如庵の内部は、普段は小さな躙り口から覗くことしかできませんが、たまに特別茶会として如庵内での茶会が行われているようです。
建物の経年劣化が激しく、人が出たり入ったりすることで、更に茶室にダメージが加わるのを避けるため、歴史ある物を守るため、納得です。
代わりに呈茶席のある旧正伝院書院にて、如庵の間取りが一目でわかる、こんなに可愛いミニチュアが展示されていましたよ。

この日は人が少なかったこともあってか、ボランティアガイドの方が園内を案内してくださいました。ガイドさんの詳細な説明付きで、苑内を更に楽しむことができましたよ。
水琴窟(すいきんくつ)がある蹲(つくばい)、発見。
そして苑内で面白いものを発見しました。
「水琴窟」です。
茶席弘庵の庭にある蹲に水琴窟の仕掛けがされており、風流な音色を楽しむことができます。一説では水琴窟の起源は江戸時代と言われており、当時は音遊びの一種として大変流行したそうです。
しかし、明治、大正、と時が過ぎるにつれ、その存在は忘れ去られ、昭和後期には、全国で確認できた水琴窟はわずか2つだけという絶滅危惧種に。
その後、昭和後期から水琴窟のブームが再来し、全国に再び水琴窟が見られるようになったそうです。
水琴窟の音色、初めて聞きましたが、とても素敵でした。
ひっくり返した水瓶の中に落ちる水の音が水瓶の中に共鳴して、何とも表現しがたい不思議で涼やかな音色を醸し出します。癒しの音です。
苑内の散策後は、旧正伝院書院の呈茶席で一服。いっても、この茶席も重要文化財ですからね!なかなか重要文化財で一服なんてする機会もありません。贅沢なおもてなしです。
平日ということもあってか、呈茶席にはフランスからの観光客お1人だけ。蝉の鳴き声と風、木々の葉擦れの音の中で、しばし歴史に思いを馳せました。


名鉄犬山ホテルが今年54年の歴史に幕を下ろし、有楽苑もしばし休苑。
次の公開は21年秋ごろの予定だよ。
美しい庭園と価値ある茶席がいつまでも守られていきますように。
