利休の侘茶の思想をくみとり、一碗の中に表現した樂茶碗
桃山の時代から約450年の歴史を持つ千家十職の陶芸家、樂家。手捻りの茶碗です。
2017年、裏千家淡交会の定期巡回公演会のご講話は、千家十職 茶碗師 第十五代 楽吉左衛門氏によるものでした。
雑誌やインターネット、美術館では拝見する機会が度々あったのですが、実際にお目にかかるのはこの時が初めてでした。
楽氏は、別記事の「千家十職とは」でもご紹介した、茶道三千家代々御用達の陶芸家です。その名から付いたいわゆる「楽茶碗」の名称は広く知られています。
この公演時、十五代楽氏は御歳70歳。全く見えない若々しい風貌に会場がどよめいていました。
柔らかな雰囲気をお持ちの職人さんで、ユーモアに溢れており、非常に興味深いお話を聞かせていただきましたよ。
- 公演会のお題目は「長次郎と私」
長次郎とは楽焼の創始者、初代長次郎のことです。
お茶碗づくりのことはもちろん、樂家の歴史、歴代樂吉左衛門の茶碗の写真を見ながらの解説、次の世代に向けて思うことなど、まさに当主からしか聞けないような、貴重なお話を聞くことができました。
お話の中で特に心に残ったお言葉がありましたのでご紹介します。
「今の立場に奢らず、誰かの真似ではない自分をしっかりと持つこと。」
「自分をしっかりと持つこと、しかし今まで積み重ねられてきた歴史をきちんと見つめること」
ということ。
樂茶碗という伝統を継承しつつも、自分の個性を込めていく。450年の樂家の歴史と伝統を受け継ぐ重責はとてつもないものなのだろうなぁ・・と。
このお言葉を聞いて、陶芸はもちろんなのですが、私は、人の生き方・人生そのものについても通ずる言葉だなあ・・と色々と深く考えてしまいましたよ。
そしてご講話の最後にご本人から重大発表が。なんと、、十五代引退!会場はまたもどよめき。
お家元に相談に行き、許可を頂いたとのことでした。当たり前ですが、やはり許可が必要なのですね。
元号が変わるタイミングで、ご長男の篤人(あつんど)さんが十六代 樂吉左衛門を襲名なさるそうです。
調べてみましたが、十六代の情報はまだ出ていませんでした。令和に切り替わると共に、と樂美術館のWebサイトにはあったので、これから少しずつ情報が出てくるのでしょうか。
十六代がどのような作品をつくっていかれるのか、そして引退された十五代が、どのような活動をされていくのかとても楽しみですね!