お茶に欠かせないお道具の一つ、茶筅。
茶道の世界では一番の消耗品でしょうか?
炉・風炉の季節も関係なく、1年中いつでもそばにある茶筅。ですが、消耗品だし、変わり映えしないために、茶筅についてこだわる方は、茶人といえど少ないのではないでしょうか。

MADE IN JAPAN 茶筅 は奈良県生駒市高山町産
その歴史は古く、室町時代まで遡ります。
村田珠光により「わび茶」がつくられた頃です。当時、珠光と仲が良かった大和鷹山城の城主の次男が、珠光からの助言を受けて、茶筅を発明したそうです。
その後、まあ色々あって、わび茶が大成し、戦国大名などがこぞって茶道を囃し立てたこともあり、茶道文化が花開き、必然的に茶筅の需要も高まったのですね。
鷹山⇨高山となり、茶筅作りが盛んな町となったそうです。
現在、高山町には13の茶筅師の家があり、国産の茶筅はほぼ100%、こちらの町で手作業でつくられています。
茶筅にまつわるQ&A!
茶筅?茶筌?どちらが正しい?
どちらも正しいそうです。
高山でも、どちらも使われているそうです。その家によって「茶筌」であったり、「茶筅」であったりするそうですよ。
各流派ごと 茶筅の竹の種類
裏千家・藪之内流・石州流・遠州流 | 白竹・淡竹(はちく) |
---|---|
表千家 | 煤竹(すすだけ) |
武者小路千家・山田宗徧流 | 黒竹 |
白竹・淡竹
巷でよく見かける茶筅は、この白竹が多いのではないでしょうか。白竹は、淡竹という種類の竹を白く晒し上げて、1年以上自然乾燥させてつくられるそうです。

煤竹
最近ではとても希少になった種類です。その昔、お家には建材に竹が使われていました。その建材の若竹に、囲炉裏の煤が何十年〜と染みて、黒くなったのが煤竹です。
元々は家を建て替えるときに、この竹を捨ててしまうのが勿体無いということで、「そうだ!茶筅に使おう♪」と、当時の方が思いついたのが発端だそうです。
究極のエコ。究極のわび茶の精神!まさにESG!(?)
ではないですか。
しかし、現代ではお家に竹はないわ、囲炉裏はないわ、で入手は年々困難になっています。そのため価格は右肩上がり。ちょっと普段使いにはできないほど希少な存在になっているようです。
表千家もいつか黒竹で代用したり、他の竹に変わってしまう日がくるのかもしれません。
黒竹
黒い竹です。加工などはしておりません。はじめは緑色で、夏を過ぎる頃から黒くなり始め、約2年ほどで真っ黒になるそうです。
煤竹に似ているように思いますが、結構生育しているらしく、入手困難に陥る心配はないようです。
黒竹は斑点が景色となるので、個性があって面白いなぁと思います。
茶筅にも「真」「行」「草」がある?
ここにもありました。茶道には常についてまわる「真」「行」「草」のレベル分け。
一般的には、
- 真・・数穂から上の本数・真
- 行・・中荒穂
- 草・・荒穂
大体一番売られているのは、真に該当する茶筅ではないでしょうか?穂先の数が増えれば増えるほど、価格も上がっていくのが通常かと思います。
濃茶には穂先の数が少ない、中荒穂・荒穂の茶筅が使われるそうです。濃茶の場合、薄茶と異なり、抹茶をシャカシャカする必要がないし、むしろ、穂先が多いとねっとりお茶が絡みついて適していないのかもしれませんね。

そう、茶筅の形は似て異なる
ということです。
竹の種類は違うかもだけど、よーく見ると実は似ているようで異なっていたのですね。
- 径
- 穂先の数
- 穂先の形
- 編み糸の段数
- 編み糸の色
などなど。
- 穂先の数については、数が増えれば増えるほど、竹の径の太さもあがっていくのが一般的のようです。しかし、径は細い方がお茶は点てやすいというのを聞いたことがあります。

- 穂先の形については、武者小路千家の茶筅のように、穂先がカールしていないものもあれば、数穂のように先がくるんと内側にカールしていたり、真の茶筅のように穂全体がゆる〜くカーブしていたり、色々ありますね。
- 編み糸の段数については、3段が「薄茶用」で、4段が「濃茶用」っていうのをきいたことがあるような、ないような・・・。
- 編み糸の色については、通常は黒色の木綿の糸が主流のようですが、御祝用で赤色のものもあるんですよね?
江戸幕府が認めた高山の茶筅師たち
江戸幕府は当時、その技術の希少価値を認め、高山の13の茶筅師に苗字を与えたそうです。茶筅の技は一子相伝の技といわれており、その家ごとでお茶の味が変わると言われる由縁でもあります。
現在は20代当主谷村丹後氏が率いる和北堂です。日本全国でワークショップなどを行っており、引っ張りだこの人気茶筅師です。
とってもお茶目でチャーミングなおじさまでした。

現在は24代目堂主、25台目が、50人以上の職人と共に茶筌づくりを行っているそうです。パリやNYでも茶筌製作のデモンストレーションを行ったり、茶筌文化の保持にも尽力されています。
表千家御用達の煤竹茶筅を主につくられています。現当主は8代目 池田壹岐氏。(煤竹茶筅はなぜか見つかりませんでしたので、黒竹貼っておきます。)
茶筅の未来
茶道と茶筅は一心同体。
茶道が存在する限り、茶筅もあり続けるのでしょうが、そうそう油断もしてられないのかなぁと、Hanaは感じています。

肌で感じるよね。
お茶にまつわる美しい日本の文化が先細っていくのは、お茶を愛する者として、また地球人としても、とても寂しいものです。
一子相伝の技といわれる高山茶筅の製造のこだわりを目にすると、安価な海外製との違いは一目瞭然。製造過程で、(特に”味削り”の部分とか、”面取り”とか)とても細かな技が要所要所に取り入れられています。
茶道人口を増やすという裾野を広げることも大切ですが、なかなか難しく、壮大なものでもあります。我々茶人が、今すぐできることの一つに、国産の茶筅をチョイスするというものがあるのかなぁと。
500年以上続く、高山茶筅、いかがでしょうか?
